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成長を続ける多くの企業が、自社のサービス品質がユーザーにとって価値のあるものなのか知りたがっており、”ユーザーエクスペリエンス(UX)”に注目しています。
しかし、ただユーザーエクスペリエンスマネジメントを始めることが成功につながるわけではないことは、皆様もお気づきのはずです。ではどうすればよいのか、というのが気になるのではないでしょうか。

Enterprise Management Associates(EMA)のヴァイスプレジデントであるDennis Drogseth氏がユーザーエクスペリエンスに関する3つの重要な要素を提示しています。

 

注目が集まること自体は正しいことですが、以下のような重要な要素に触れられていません。

「ユーザーエクスペリエンスの管理とは何なのか?」
「デジタル時代におけるUEMを可視化しているのはだれか?(または誰が可視化しなければならないか?)」
「ユーザーエクスペリエンスを管理するメリットは何か?」

 

引用元:Who Owns User and Customer Experience Management? Dennis Drogseth EMA

 

今回の記事ではこの疑問にスポットを当て、ビジネスを成長させるユーザーエクスペリエンスマネジメントについて、考察してみたいと思います。

ユーザーエクスペリエンスの管理についての3つの疑問

世界各国の企業において、これまでもユーザーエクスペリエンスへの注目度・関心度は高いものでしたが、近年はそれがトッププライオリティとして扱われるようになってきました。

しかし一言で「ユーザーエクスペリエンスの向上」というものの、これは果たして何を指しているのでしょうか。

まずはユーザーエクスペリエンス管理とは何なのか、というところから考えていきます。

1. What Is User Experience Management?

企業にとってトッププライオリティのこの問題にいざ取り組もうとした場合、この記事をご覧になっている皆さんなら何に重点をおいて行動するでしょうか?

元々ユーザーエクスペリエンス(UX)は、認知心理学者でApple Computer社(当時)に勤務していたDonald A. Norman博士の考案した造語と言われており、システムと接点を持つ時に人がどう感じるかを指した言葉です。

しかし近年、この言葉が指し示す意味は、もっと広い範囲で捉えられるようになってきました。

以下は、EMAが2012年に公開した「ユーザエクスペリエンス管理とビジネスインパクトに関する調査」の一部で、ユーザーエクスペリエンスマネジメントの5つの用途のうち回答者が最も高いプライオリティを置いていたものを、回答の多かった順に並べたものです。

  1. Business impact(32%):ビジネス成果の最大化
  2. Performance(30%):パフォーマンスとセキュリティに対する懸念の払拭
  3. Service usage(17%):ユーザーごとの利用頻度や利用パターンの理解
  4. User productivity(11%):サービスの効率化による生産性向上
  5. Design(11%):消費者にとって最適なナビゲーション設計

    引用元:Prior EMA research on User Experience Management

ここでは最も票の集まったBusiness impact (32%) と次の Performance (30%) に注目します。

実はこの Business impact は他の選択肢を包括しているとも解釈することができます。

現実問題として、パフォーマンス、サービス利用率、ユーザーの生産性、そしてデザインにまずい所があればビジネス成果の最大化は望めません。

Business impactに注目している32%を例外とすると、次点の「パフォーマンスとセキュリティに対する懸念の払拭」 がユーザーエクスペリエンスの用途として最も多くの票を集める結果になり、ビジネスを最大化するためにパフォーマンスが重要な位置を占めていることを示しています。

 

つまりユーザーエクスペリエンスの管理とは?

「満足度の高い体験をユーザーに提供することでビジネスの成果を最大化することを目的とした、パフォーマンス管理をはじめとするあらゆる活動」を示しています。

 

2. So Who Really Owns User Experience Management?

ユーザーエクスペリエンスでアプリケーションパフォーマンスマネジメント(APM)が重要視されている点については先ほど述べたとおりですが、その重要度にも関わらず、現場レベルの運用や保守の一環であると誤解されているケース多く存在します。

実際のところ、エンドユーザーマネジメントやカスタマーエクスペリエンスに関する問題の解決に当たっているのは、サービスデスクとITサービスマネジメントチームです。

しかし、これは本来あるべき姿ではありません。

 

EMAの調査資料によれば、アプリケーションパフォーマンス戦略に事業部や経営レベルが積極的に関与していることを示すデータがあります。

  • アプリケーションマネジメント戦略にITディレクター、マネージャーまたはCxOの経営陣が関わっている割合:53%
  • CIO/CTOまたはディレクターがアプリケーション管理計画または実施に直接関与している割合:70%
    • また、同調査でヴァイスプレジデント、CEOまたはCFOがアプリケーション管理計画のイニシアティブをとっている割合は約20%

 

「アプリケーションパフォーマンスに関連する問題を迅速に解決し、業務への影響を最小化するため」
「事前に問題を察知し、トラブルの発生を未然に防ぐため」
「事業部とIT部門で優先度を共有し、限られたリソースをより重要なアプリケーションの改善に向けて最大化するため」


等々、ユーザーエクスペリエンスの改善目的は、企業ごとに様々だと思います。

しかし、目的の違いに関わらずユーザーエクスペリエンスの管理・改善を推進していくためには、IT部門だけではなく、経営層や事業部門がイニシアチブを取った企業全体の戦略が必要です。

限られたリソースで業績を最大化することが求められ、後述するビジネスへ及ぼす影響の大さやそれに伴う責任の重さを考慮すれば、サービスデスクとITサービスマネジメントチームだけで推進していくことは現実的ではありません。

ここで引用した以外にも、EMAの各種リサーチ結果で、ユーザーエクスペリエンスの管理はITと事業部門のステークホルダーでお互いに共有されるべき課題であることがたびたび指摘されています。

 

つまりユーザーエクスペリエンスの可視化をしなければならないのは誰?

ITと事業部門のステークホルダー、あるいは、それらより上位の経営者層が、ビジネスの観点から積極的に戦略に参加すべきです。

サービスデスクやITサービス部門だけで担うものではありません。

 

3. What Are the Benefits?

ユーザーとカスタマーエクスペリエンスの重要性が高まり続ける理由を端的に挙げれば、業績に大きな影響があるためです。

いくつか、ユーザーエクスペリエンスがビジネスに影響を与えた例を挙げると、

  • ある電機メーカーでは、システムの遅延を改善したことで、販売予測システムの入力率を改善させた。正確なデータがリアルタイムで入力されるようになっただけでなく、販売予測システムと連携していた生産刊管理システムのデータも正確になったことで必要なものを必要な時に必要なだけ生産できるようになり、無駄を省き利益拡大につながった。

 

  • Amazonが2006年に公表した情報によれば、amazon.comでは、読み込み時間が0.1秒短縮されると、売上が1%増加した。

 

  • Googleは、ページの反応が0.5秒遅くなるとアクセス数が20%低下すると発表した。
    • ※アクセス数の低下は広告収入の低下に影響する

 

  • あるIT機器メーカーは、8万8000人のユーザーが利用しているウェブ会議システムをわずか3人で運用している。何らかの問題を検知したら、ユーザーから指摘を受ける前に、能動的に不便をお詫びして問題が解消したことを連絡している。この対応の早さが顧客ロイヤリティを高め、継続ユーザーの確保に貢献している。

 

これら一例からもわかるように、ユーザーエクスペリエンスの改善と一口に言ってもその効果はデータの精度向上、売上増加、ユーザー数の増加など、様々な形で現れます。

また、ユーザーエクスペリエンスを改善する目的で行ったサービスの改善や取り組み自体が、顧客ロイヤリティを高め、価格競争に陥らずに新たな顧客を獲得する大きな武器にもなります。

 

つまり、ユーザーエクスペリエンス管理の本当の利点は?

金銭的な利益はもちろんですが、その過程で、顧客ロイヤリティなどの形でユーザーの満足がビジネスにプラスの影響を与え、他社との差別化要素にもなる点です。

※利益については項目で触れています。

 

How about in Japan?

今回ご紹介したEMAの調査資料は米国企業を対象にしたもので、やはりユーザーエクスペリエンスに対する盛り上がりの中心は米国にあると思われます。

他方、私たちテリロジーはユーザーエクスペリエンスについて国内の様々な企業の方からご意見を伺う機会をいただいておりますが、ここに挙げたようなテーマについて、日本の事情は米国の事情とはまた少し違う状況にあると思えます。

「今後のビジネスにおいてユーザーエクスペリエンスが重要な要素となる」といった話に対してほぼ同意していただけるのですが、戦略的な取り組みについて米国ほど本格化していないようです。

その背景には、

  • ユーザーエクスペリエンスを改善・管理するためのIT戦略が、業績を大きく左右する重要な要素であるという認識が、経営者に不足している
    • ※頭では理解できても実感がないので本腰を入れられない
  • 米国と異なりITエンジニアの大半がSIerに所属しており、自社の利益を目指したITシステムを設計・構築できる社内エンジニアが不足。
  • システム構築をアウトソースしたので、パフォーマンスやユーザーエクスペリエンスの問題もアウトソース先に調べてもらえばいい、という認識。
  • そもそも経費削減によって情シスが人手不足のため、大きなインシデントでもない限り改善のためのリソースが割けない。

等々の理由がありそうです。

 

べき論の押しつけにならないように、最後にユーザーエクスペリエンスの改善が具体的に企業の価値をどう変えたかを示すデータをご紹介して終わりたいと思います。

 

以下はTech-Tonicsによるユーザーエクスペリエンスの可視化のための統一的なアプローチをとる企業と、そうでない同じ業種の企業では、収益成長、収益性と市場評価にどの程度差が出ているかを調査したデータの一部抜粋です。

  • 収益成長率において、ユーザーエクスペリエンスの可視化に取り組んだ企業は、同じ業種の平均値と比べて15%高い
    • Tech-Tonics考察:より高い顧客満足度と顧客ロイヤリティに負うところが大きい
  • 営業利益率において、ユーザーエクスペリエンスの可視化に取り組んだ企業は、同じ業種の平均値と比べて17%高い
    • Tech-Tonics考察:ユーザー体験を通じて効率化された業務が効率されたことがその一因にある
  • 向上した収益性は、市場から最大で29%のプレミアムとして評価された
    • Tech-Tonics考察:時価総額100億ドルの企業であれば、これは企業の市場価格で29億ドルの価値が付加されたに等しい
  • ユーザーエクスペリエンスの統合アプローチを取り入れている企業の株式市場のアウトパフォーマンスは、取り入れていない企業と比較し、41%も上回った
    • Tech-Tonics考察:ユーザーエクスペリエンスの統合アプローチを取り入れていない企業の、2010年から2013年の平均のアウトパフォーマンスが67%だとすると、取り入れている企業は95%になる計算でとなる

    引用元:User Experience Linked to Financial Returns

 

このデータが示す通り、ユーザーエクスペリエンスへの取り組みで先行している米国において、明確に企業の業績や企業価値に影響があることがすでにわかっています。

いち早く改善に取り組むことで、ライバル企業に対するアドバンテージを確保できるチャンスとも言えます。事実、米国企業をライバルとする国内のグローバル企業や、オンラインビジネスを主とする企業ではすでに取り組みを開始しています。

また、米国企業に勝負を挑むのであれば、ユーザーエクスペリエンスの管理・改善を当たり前に行う企業を相手にすることになります。ユーザーエクスペリエンスを戦略的に用いてはじめてスタート地点に立ったといえます。

今後、ユーザーエクスペリエンスの改善・管理に取り組む方は、今回取り上げたEMAのDennis氏が挙げた3つの要素を参考にしていただければと思います。

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